結婚から始めましょう。
「桃香」

不意に私を抱き寄せると、耳元に顔を寄せてくる。蓮が人前でこんな行動に出ることなんて今までなかった。周りの視線も感じるし、気恥ずかしくて一気に顔が熱くなってくる。

「他の男に〝桃香さん〟なんて呼ばれるのは面白くない」

純也との会話をしっかり聞いていたようだ。
見上げると、蓮は眉間にシワを寄せていた。

「仕方ないとわかっていても、やっぱり面白くない」

「蓮さん?」

「ごめん。嫉妬した」

やっぱり、蓮はちゃんと私を想ってくれている。それが嬉しくて、思わず笑みを浮かべた。

「私も、蓮さんが綺麗な人達に囲まれて仕事をしていると思うと、嫉妬しちゃう」

素直に伝えると、蓮は一瞬目を見開いた後、嬉しそうに微笑んだ。

「よかった。お互い様だ」




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