結婚から始めましょう。
「あの女性は、結婚相談所のアドバイザーだと伺っています」

それを聞いて、なんとなく話が掴めてきた。
確か、純也は一度離婚していたはず。

「最近、純也さんもすっかり落ち着かれたようで。それなのに、再婚に一向に目を向けないことを南田さんが心配されて、動かれたようです」

それは余計なお世話というものでは?と思ったけれど、どこも親が子の心配をするのは同じこと。自分も30歳を過ぎたあたりから、「いい人はいないのか」という口撃が尽きない。
それどころか、少し前には祖父にまで無理難題を突きつけられてしまった。

『半年以内に結婚できたら、別会社の代表取締役に就任させる』

別にそんなものになりたいわけではない。それに結婚の予定は皆無だ。
祖父の期待には応えたいと思う反面、いくら祖父が相手でも、さすがに断るつもりでいた。

それにしても、祖父はなぜそんな提案してきたというのだろうか。まあ、親族間のいざこざを考えてのことだろうと思うけれど。



結婚か……

これまで、あまり意識してこなかった。

でも、ふと考えてみた今、なぜか先ほど見かけたアドバイザーの女性の顔が浮かんだ。



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