結婚から始めましょう。
「ここ……ですか?」

「気に入りませんか?」

「いえ、そうではなくて。高価すぎるというか……」

このお店は私でも知ってるけど、有名人も愛用者の多いブランドだ。

「それは問題ないです。私が桃香さんに贈りたいんですから。
それに、こういう言い方は好きではありませんが、私と夫婦になるとどうしても公の場に出ることがあります」

おそらく、パーティーとかのことだろう。お見合いの時にチラッと話していた。

「下世話な話ですが、周りはどうしてもあなたの服装とか身に付けている物にも目を向けます。高ければ良いというわけではないと私は思っていますが、世間は必ずしもそうではありません。
桃香さんを守る為にも、お店は指定させてください。他に桃香さんの好きなブランドや欲しい物があれば、それはまた別でプレゼントさせてくださいね」

「そ、そんな。だ、大丈夫ですから」

蓮と結婚することの大変さが、改めてのしかかってきた気がする。私、やっていけるんだろうか。

「不安にさせてしまいましたか?」

「正直、少しだけ」

「すみません。けれど安心してください。私が全力でお守りしますから」

そんなセリフと共に笑顔を向けられたら、誰だってドキドキしちゃうと思う。

「さあ、行きましょう」


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