結婚から始めましょう。
「私といてドキドキしますか?」

少し驚いた顔で聞き返される。

「はい。恥ずかしかったり嬉しかったり、いろいろな時にドキドキしてます。お付き合いの経験がないので、よくわからない感じですが」

「よかった」

なんだろう。蓮がすごく嬉しそうな表情をした。

「少しは私のことを意識してくれてるってことですね」

そういうことになるのか……確かに、そうなのかもしれない。

「それから、桃香さんに異性とお付き合いした経験がないのは、私としては嬉しい限りですよ」

うん?どういうことだろう。
蓮はますます笑みを深めている。

「何をするにも、私が桃香さんの初めてになれるということです。これほど嬉しいことはないです」

「私のハジメテ……」

一拍おいて意味を理解すると、カァッと顔が熱くなっていく。

「その感じは、私としては嬉しいですね。桃香さん。今日はこの後、一度私のマンションを見に来ませんか?桃香さんの職場からだと少し離れてしまいますが、部屋は余っているので一緒に暮らせると思います」

突然の提案に驚くも、これはよいきっかけかもしれない。どう考えても私のお城では一緒に住めないし、ここは蓮の提案に乗るべきだろう。

「そうですね。新しく部屋を探すのも時間がかかりますし、蓮さんのマンションで一緒に住むのが良さそうです。あっ、でしたらいつものお礼に、今夜は私が夕飯を作りましょうか?」

「いいんですか?」

途端にぱあっと表情を綻ばせる蓮。いつもと違う無邪気な様子にドキリとしてしまう。

「も、もちろんです」








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