結婚から始めましょう。
「ここ……ですか?」

本日2度目のこのセリフ。無意識に呟いてしまうほど、彼の住むマンションは私の想像以上の豪華さだ。

これがマンション?まるでホテルのようだ。駅も直結だしスーパーや飲食店も充実していて、抜群の立地条件。
セキュリティーも万全で、エントランスにはコンシェルジュが常駐している。
私の職場までも、乗り換えなしで30分以内で行ける。

「どうぞ」

出されたスリッパを履いて蓮についていけば、信じられない光景が広がっていた。高層ビルの立ち並ぶこの辺りの中でも群を抜いて高い位置にあるこの部屋からは、都会の街並みが一望できた。
少し離れた所には、さっきまでいたベリーヒルズビレッジも見えている。
夜になれば、きっと素敵な夜景が見られるのだろう。

室内は穏やかな蓮らしくブラウン系で統一されていた。無駄がなくシンプルなのにどこか優しくて、彼の丁寧な暮らしぶりを感じる。聞けば週一で掃除をお願いしているとのこと。

「気に入ってもらえましたか?」

「はい。なんだか、贅沢すぎてもったいないぐらい」

そのまま蓮に連れられて室内を見て回った。

「まずはここですが、私の書斎になっています。いつもはここで寝起きもしています」

初めて目にするプライベートな空間にドキドキしてくる。
大きな本棚には、一面になんだか難しそうな本がびっしり並べられている。
経済の本、経営の本……そんなところから、彼が仕事に真摯に向き合っていることが伝わってくる。

「ここはゲストルームです。とりあえず、ここを桃香さんの部屋にします」

ひ、広い。
私の部屋のものを全て運び入れても、きっと無駄にスペースが余りそうだ。





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