結婚から始めましょう。
お付き合いするようになってから、蓮についてわかったことがいくつかある。

まず一つ目は、彼は紳士だということ。仕事を離れても言葉は丁寧だし、誰に対しても親切だ。

二つ目は、プライベートな時には少しだけ意地悪になるということ。ちょいちょいからかわれてる気がする。

そして三つ目は〝家庭〟というものに飢えているということ。



「桃香さん、美味しいです」

彼のリクエストで今夜の夕飯は和食だ。煮魚に胡麻和え、肉じゃが、味噌汁。ザ・一般家庭の和食メニュー。彼はそんな平凡な夕飯を前にして、目をキラキラと輝かせた。

「うちの母は、滅多に料理をしないのですが、作っても洋食ばかりで。こんなメニューを普通に作れてしまうなんて、感動しました」

えっと……普通だと思うけど。
私が作った食事を前にした蓮は、なんだか少年のように見える。こんなに喜んでもらえるのなら、もっと作ってあげたくなる。

「こういうものでよければ、来週も作りますよ」

「本当に？」


これほどまで嬉しそうにされるなんて……
やっと私がしてあげられることを見つけられた。
気付けば彼をもっと喜ばせたいと思っているし、こういう気持ちになることは嫌じゃない。

「私が作ったもので、蓮さんがこんなに喜んでくれるなんて嬉しくなっちゃいます」

こうして２人で微笑み合う時間は、大切にしたいと思った。



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