結婚から始めましょう。
「何これ。真顔で惚気るとか、こんな蓮初めて見るわ。桃香さん、こいつ一途で本当にいいやつだから。そこは友人の俺が保障する」

「は、はい」

「こいつのこと、頼んだよ」

言い終わるや否や、蓮がポカリと紘を小突く。
ここまで自然体な蓮さんは初めて見る。すごく新鮮だ。

「紘は一体、何目線なんだ?」

「ん?保護者?」

そうか、自然体に見えたのは、蓮の言葉遣いが砕けているからだ。

「また連絡する。桃香さんも一緒に、食事でも誘うわ。あっ、式は呼べよ」

「確認しなくたって、リストに載ってると思う」

「まあ、そうだな。じゃあな、桃香さんも」

手をヒラヒラとさせながら、紘は爽やかに去っていった。

「騒がしい友人で、すみません」

「いえ。仲が良いんですね」

「ええ。一番の親友です」

「戻っちゃった……」

「え?」

紘がいなくなった途端、蓮の口調がいつもの敬語に戻ってしまい、思わず呟いてしまった。

「な、なんでもありません」

ぶんぶん振る片手を、ガシッと掴まれてしまう。

「桃香さんの思っていることはなんでも知りたいんです。怒らないので、話してください」

「えっと……さっき、紘さんと話していた蓮さんは、その、口調が砕けていて……」

そっと伺い見る。蓮は何も言わない。気を悪くさせてしまっただろうか?



「ぶ、はははは……」

間をおいて、突然蓮が笑い出した。一体何がそんなにおかしいのだろう?

「すみません」

謝りながらも、まだ肩を震わせている。


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