結婚から始めましょう。
「ただいま戻りました」

南田親子との面談を終えて、社長である伯母の市川華子の元へ報告に向かう。

「あら、お帰り桃ちゃん」

タイミングよく社長室から顔を出した華子が、何かを確認するように、私の顔をじっと見てきた。

「なんとかなった、みたいね?」

「とりあえず」

「南田さん、手強かった?」

「すっごくね。ああいう事情の方は、私には重荷だよ。心理学的なテクニックとかあるわけじゃないし」

「桃ちゃんだからお願いしたのよ」

「なんで?私よりも経験のある、ベテランやり手アドバイザーがいるのに」

さっと腕を振ったその先で、3人の女性アドバイザーがにこやかに手を振ってくれる。上は50代から下は30代の彼女達は、全員既婚者で子育て経験がある。

「南田さんのように傷付いた人には、テクニックなんていらないの」

どういうことだろう。華子の言わんとするところがわからず、続きを促す。

「上面だけのテクニックで繕っても、見透かされちゃいそう。そよりも大事なのは、とにかく相手に共感すること。桃ちゃんは相手の気持ちを汲み取るのが得意じゃない」

「というより、勝手に感情移入しちゃうだけなんだけど……」

簡単に言えば涙脆い。ドラ◯もんの映画でだって、ボロ泣きしてしまうぐらいには。

「それでいいのよ。ね、桃ちゃんだから南田さんを任せたのよ」



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