結婚から始めましょう。
容赦ない悪意
夫婦としての儀式とでもいうのだろうか。
初めての夜を迎えてからというもの、私達の精神的なつながりは確実に強くなり、2人の距離はますます近付いた。
蓮が隣にいることはすっかりあたりまえになっていて、新居での生活も順調だ。
「桃香、次の週末におじいさんから食事の誘いがあったんだけど行ける?」
蓮が幸太郎のことを〝おじいさん〟と呼んだということは、プライベートな顔合わせなのだろう。
「大丈夫だよ」
「じゃあ、予定に入れておいて」
本当は入籍前にお会いしたかったけれど、幸太郎は多忙な人だから仕方がない。
約束の日、すっかり秋めいてきた季節に合わせて選んだネイビーのワンピースに身を包んで、幸太郎の自宅に向かった。
都心から少し離れたところにあるお宅は、庭も建物もとにかく広くて、まるで明治時代の洋館を彷彿させるデザインだった。まさしく〝ハイカラ〟という言葉が似合いそうだ。
呼び鈴を鳴らすと、家政婦の咲枝が出迎えてくれた。
一体、この豪邸には何人の家政婦さんがいるのだろうか?考えるだけで怖くなってくる。
これから対面するのは、それぐらいすごい人なのだ。
玄関には私達以外にも来客があったのか、男性もののカジュアルな革靴があった。
「咲枝さん、誰か来てますか?」
「ええ。真人さんがいらしてるんですよ」
真人さん?誰だろうと蓮を見上げると、意外なことに彼はわずかに顔をしかめていた。こんな表情をするのはかなり珍しい。
「蓮さん、真人さんって?」
「あっああ。従兄弟だよ。母の兄の息子にあたる人」
「へえ。じゃあ、挨拶をしないとね」
「そうだね」
声をかけたものの、どう見ても蓮は乗り気じゃなさそうだ。
何かあるのだろうか?
それっきり、蓮は口を閉ざしてしまった。
初めての夜を迎えてからというもの、私達の精神的なつながりは確実に強くなり、2人の距離はますます近付いた。
蓮が隣にいることはすっかりあたりまえになっていて、新居での生活も順調だ。
「桃香、次の週末におじいさんから食事の誘いがあったんだけど行ける?」
蓮が幸太郎のことを〝おじいさん〟と呼んだということは、プライベートな顔合わせなのだろう。
「大丈夫だよ」
「じゃあ、予定に入れておいて」
本当は入籍前にお会いしたかったけれど、幸太郎は多忙な人だから仕方がない。
約束の日、すっかり秋めいてきた季節に合わせて選んだネイビーのワンピースに身を包んで、幸太郎の自宅に向かった。
都心から少し離れたところにあるお宅は、庭も建物もとにかく広くて、まるで明治時代の洋館を彷彿させるデザインだった。まさしく〝ハイカラ〟という言葉が似合いそうだ。
呼び鈴を鳴らすと、家政婦の咲枝が出迎えてくれた。
一体、この豪邸には何人の家政婦さんがいるのだろうか?考えるだけで怖くなってくる。
これから対面するのは、それぐらいすごい人なのだ。
玄関には私達以外にも来客があったのか、男性もののカジュアルな革靴があった。
「咲枝さん、誰か来てますか?」
「ええ。真人さんがいらしてるんですよ」
真人さん?誰だろうと蓮を見上げると、意外なことに彼はわずかに顔をしかめていた。こんな表情をするのはかなり珍しい。
「蓮さん、真人さんって?」
「あっああ。従兄弟だよ。母の兄の息子にあたる人」
「へえ。じゃあ、挨拶をしないとね」
「そうだね」
声をかけたものの、どう見ても蓮は乗り気じゃなさそうだ。
何かあるのだろうか?
それっきり、蓮は口を閉ざしてしまった。