隠し事はサヨナラの種【完】
星に願いを
あれは、2年前のこと。私は、同じ部署の先輩社員 篠宮 悠飛さんに片思いをしていた。
「へぇ、来週、流星群が見られるらしいな」
昼食を終え、隣の席でスマホをいじってた篠宮さんが言った。
「うちの実家近くに、星の観測が出来るところがあるんですよ」
私は、ふと思い出して答える。
「へぇ! 何か、見え方が違うのか?」
篠宮さんは、興味深そうに、スマホから顔を上げて、こちらを見た。
「高原で、周りに民家がないから、夜は真っ暗なんですよ。排ガスとかも少ないから、空気も澄んでるし。だから、他の所だと見えない星まで見えるんです」
私はまるで自分のことのように得意気に説明する。
「ふーん」
と少し考えるように顎に手を当てた篠宮さんは、ポンと手を打って言った。
「よし! じゃあ、天野、来週の金曜、そこに行くから、案内しろ」
篠宮さんは、有無を言わせず、決定する。
「えっ⁉︎ うちは田舎ですから、流星群の時間には、もう電車もバスも終わってますよ!」
焦って答えるけれど……
「バカ! 高原なら車の方が便利だろ。最寄りのバス停から坂道を歩いて登るのなんて、大変じゃねぇか」
と、篠宮さんに一蹴された。
まぁ、確かにそうなんだけど……
「じゃあ、仕事帰りにそのまま行くから、泊まりの準備して来いよ」
篠宮さんは、当然のように言い、パソコンを再起動して、午後の仕事の準備を始める。
「えっ、と、泊まり⁉︎」
そりゃ、私は篠宮さんが好きだけど、だからって、付き合ってもいない人と泊まりなんて、絶対、無理!
私が言葉を失くしてうろたえていると、篠宮さんは、ふっと鼻で笑った。
「天野、何か勘違いしてね? その高原で夜空を見上げながら、一晩過ごすって言ってるんだぞ? いや、もし、天野がどうしてもって言うなら、然るべきホテルに泊まってもいいけど」
篠宮さんは、私を見て、くくくっと少し意地悪に笑う。
「結構です! 絶対に言いません!」
からかわれた!
私は、悔しくて、ぷいっとそっぽを向く。
すると、背中越しに、物音で、篠宮さんが立ち上がるのを感じた。篠宮さんは、ぽんと私の頭に手を置くと、耳元に顔を寄せる。
「冗談だよ。そんなに怒るな。きっと、片道2時間位かかると思うから、聴きたい曲があったら、用意しておけよ。ブルートゥースで飛ばせばそのまま流せるから」
そう囁いて、私の髪をくしゃりとひと混ぜする。
「さ、コーヒー1杯飲んだら、仕事するかな」
篠宮さんは、何事もなかったかのようにコーヒーサーバーに向かう。
何、これ?
来週末、ドライブデートってこと?
しかも、夜中にずっと一緒?
考えれば、考えるほどそわそわと落ち着かない。
篠宮さんは、誰にでも優しいし、明るくて気さくで人懐っこい。単に、流れ星を見たいだけなのかもしれない。
私は、微かな期待を抱きつつも、その期待を否定して自制を試みる。もし、何でもなくても、傷つくことがないように。
「へぇ、来週、流星群が見られるらしいな」
昼食を終え、隣の席でスマホをいじってた篠宮さんが言った。
「うちの実家近くに、星の観測が出来るところがあるんですよ」
私は、ふと思い出して答える。
「へぇ! 何か、見え方が違うのか?」
篠宮さんは、興味深そうに、スマホから顔を上げて、こちらを見た。
「高原で、周りに民家がないから、夜は真っ暗なんですよ。排ガスとかも少ないから、空気も澄んでるし。だから、他の所だと見えない星まで見えるんです」
私はまるで自分のことのように得意気に説明する。
「ふーん」
と少し考えるように顎に手を当てた篠宮さんは、ポンと手を打って言った。
「よし! じゃあ、天野、来週の金曜、そこに行くから、案内しろ」
篠宮さんは、有無を言わせず、決定する。
「えっ⁉︎ うちは田舎ですから、流星群の時間には、もう電車もバスも終わってますよ!」
焦って答えるけれど……
「バカ! 高原なら車の方が便利だろ。最寄りのバス停から坂道を歩いて登るのなんて、大変じゃねぇか」
と、篠宮さんに一蹴された。
まぁ、確かにそうなんだけど……
「じゃあ、仕事帰りにそのまま行くから、泊まりの準備して来いよ」
篠宮さんは、当然のように言い、パソコンを再起動して、午後の仕事の準備を始める。
「えっ、と、泊まり⁉︎」
そりゃ、私は篠宮さんが好きだけど、だからって、付き合ってもいない人と泊まりなんて、絶対、無理!
私が言葉を失くしてうろたえていると、篠宮さんは、ふっと鼻で笑った。
「天野、何か勘違いしてね? その高原で夜空を見上げながら、一晩過ごすって言ってるんだぞ? いや、もし、天野がどうしてもって言うなら、然るべきホテルに泊まってもいいけど」
篠宮さんは、私を見て、くくくっと少し意地悪に笑う。
「結構です! 絶対に言いません!」
からかわれた!
私は、悔しくて、ぷいっとそっぽを向く。
すると、背中越しに、物音で、篠宮さんが立ち上がるのを感じた。篠宮さんは、ぽんと私の頭に手を置くと、耳元に顔を寄せる。
「冗談だよ。そんなに怒るな。きっと、片道2時間位かかると思うから、聴きたい曲があったら、用意しておけよ。ブルートゥースで飛ばせばそのまま流せるから」
そう囁いて、私の髪をくしゃりとひと混ぜする。
「さ、コーヒー1杯飲んだら、仕事するかな」
篠宮さんは、何事もなかったかのようにコーヒーサーバーに向かう。
何、これ?
来週末、ドライブデートってこと?
しかも、夜中にずっと一緒?
考えれば、考えるほどそわそわと落ち着かない。
篠宮さんは、誰にでも優しいし、明るくて気さくで人懐っこい。単に、流れ星を見たいだけなのかもしれない。
私は、微かな期待を抱きつつも、その期待を否定して自制を試みる。もし、何でもなくても、傷つくことがないように。