触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜
初めて澪ちゃんの部屋に来たのに、まさか1人で寝ることになるなんて思わなかった。

「次は頑張る」わけじゃなかったけど、根拠もなく隣で寝られると思っていたから。




乾燥機の終了を知らせる音楽が鳴って、澪ちゃんが脱衣所まで歩く音が聞こえる。

洗濯物を畳み終わったら来てくれるはずだと願いながら、目をつぶる。


思った通りに、少し間を空けて澪ちゃんが寝室に来る。
ゆっくりとクローゼットを開ける音に、寝たふりをしながら耳を澄ました。



だけど澪ちゃんはそのまま寝室を出ていってしまった。

部屋の電気がそのまま消えて、テレビの音も聞こえなくなった。

今日はもう来ないのかもしれないと思うと、不安でいてもたってもいられない。








「……澪ちゃん」



リビングの窓際、マッサージチェアを倒した状態で澪ちゃんが横になっていた。

ほどいた髪が横からこぼれている。

腕をまぶたの上に乗せていた澪ちゃんが、少しずらして隙間から私を見る。



「ミカさん、どうしたの。眠れないの?」

「……うん。澪ちゃんが一緒じゃなきゃ眠れない」



ずいぶん勝手なことを言ったと思う。

澪ちゃんが困ったように眉を下げた。



「寝ようか」



観念したように息を長く吐いて体を起こした。






「今日はしないの?」

「うん」



ベッドに並んで横になって。

期待していたわけじゃないけど、そういう流れになるんだろうと勝手に思っていたから、「しない」と言われて戸惑う。



向かい合ってはくれるんだけど、髪も、いつもみたいに撫でてくれるんだけど、距離がある。

胸の前に置いた手を、このまま伸ばせばすぐに触れるのに、拒絶されるかもと思うと怖くてできない。


ーーこういう気持ちか。


触りたいのに触れないのはつらい。

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