触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜
『今お前んちの前だから。来ないなら部屋まで行くぞ』

「やめてよ、わかったよ。
準備するからちょっと待ってて」



正直、乗り気ではなかったけど、家の中にまで来られるのは困る。
実際家を知られているから、無視していたら本当に部屋まであがりかねない。

適当な服を着て適当にメイクをして、バッグにスマホと財布だけを詰めて家を出た。



「おー、なんか私服見るの久しぶり」

「とっととご飯食べてさっさと帰ろう」



何度か来て覚えたのか、勝手知ったる風に来客用の駐車場に車を停めている。

その後部座席を開けて乗り込んだ。



「なんで助手席じゃないの?」

「当たり前でしょう」

「すげえ警戒心だな、感心するわ」



斜め後ろから笑う早坂の横顔を見る。
つい1ヵ月前まで隣にいたのに、今はどこか久しぶりに会った同級生のように感じる。



「ミカの好きな奴って誰ー?」

「教えない」

「うちの会社にいる?」

「言わない」

「……高橋さん?」



予想外なところから、茜ちゃんが出てきて笑ってしまう。



「だってこの前のすごかったじゃん。
なぁ俺嫌われてんの?」

「知らなーい」



こうして早坂と笑って話をするのは久しぶりだった。

隣よりもこの位置からのほうが楽だ。

緊張しなくて済む。

< 140 / 259 >

この作品をシェア

pagetop