触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜
SARASAに着いて、ドアを開けたのは茜ちゃんだった。
カシャン、と細かいベルの音が響く。

カウンターには見慣れた女の子の姿をした澪ちゃんと、その向かいに小柄な女の人が座っていた。

ベルの音に反応して2人の視線がこちらに注がれる。



「舞ちゃん!」



泣きそうな声で茜ちゃんが叫んだ。

マイと呼ばれた女の人に向かって一直線に走っていく。
それから両手で顔をつかんで、頭をフルスイングする。

再会を喜んで柔らかく笑う舞さんが何かを言いかけた直後、ゴツッと鈍い音が聞こえて声が悲鳴に変わった。



「いったい! 久しぶりに会ったのに頭突きってなんだ!」

「なんだじゃない! 私昨日、誕生日だったのに! どこほっつき歩いてたのなんで電話繋がらないのなんで昨日じゃなくて今日なの!」



茜ちゃんが息継ぎなしでまくし立てながら、舞さんの頬をこれでもかというくらいに左右に引っ張る。



「いひゃぁーーー」



子どものような高く情けない声を出しながら、舞さんが唸る。

肩まで伸びる緩いウェーブのかかった金茶色の髪。白いレースがたっぷりついた淡いピンクのスカートに真っ白なタイツ。
靴は真っ赤なラウンドトゥのパンプスで、舞さんの格好はいわゆるロリータ・ファッションと呼ばれるそれだった。



「ミカさん今日の朝ぶりー」



衝撃的なビジュアルと2人のやり取りに、ドアの前で立ち尽くしていたらカウンター越しに澪ちゃんが両手を広げていた。


ーーいや、届かないから。
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