触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜
「あの人が茜ちゃんの彼女さん?」



2人の邪魔にならないように、ドアから一番近い席に腰をかける。



「あ、ミカさん知ってたんだ。舞さん。俺の大学の先輩だった人だよ。
昼くらいに茜さんのアパートの前にいたから、学食で時間つぶしてここまで連れてきた」

「私に似てるって聞いたけど、似てないね」

「そう? 似てるよ、背格好とか。小さいし髪ふわふわしてるし可愛い感じ」



澪ちゃんの口から知らない女の人の賛辞が出てむっとする。



「……じゃあ澪ちゃん、もしかしたら先輩のこと好きになってたかもね」

「ヤキモチ? ヤキモチだ!」



「わー」と喜びながら澪ちゃんがまたカウンターの中で両手を広げる。


……だから届かないってば。




「ちょっとアンタ達、イチャつくなら家でしてちょうだい、うるさい」



ギョッとして後ろを振り向くと、いつの間にかサラサさんが立っていた。
私と茜ちゃん、どちらに言ったのかわからないけど、茜ちゃんがようやく舞さんの頬から手を離す。



「じゃ、茜、帰ろうか」



真っ赤になった両頬を押さえて、舞さんがスツールから飛び降りた。
私と同じくらいの身長かと思っていたけど、たぶん私よりも小さい。
こうして見ると、絵本から出てきたような外見をしている。

茜ちゃんが舞さんのものらしいキャリーケースに手をかける。

舞さんは何も頼まずに、茜ちゃんを待つためだけにここにいたらしい。
サラサさんに頭を下げている。



「じゃーな、澪。またな。澪の彼女もうるさくしてごめんな?」



外見そぐわないサバサバした口調で謝って店を出ていく。
茜ちゃんもその後に続いた。



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