触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜
「……須賀さんと早坂」
「なにしてんのお前ここで」
「やっぱり。百瀬さんもよく来てるよね、ここ。俺も奥で飲んでるんだよ」
澪ちゃんと抱き合っていたところを、よりによって会社の人と元彼に見られた。
それ以前に、あの須賀さんがここの常連だったことに驚く。会社の中での彼は、真面目で優秀で、こういう羽目を外すような場所には無縁だと思っていたから。
どちらかというと高級クラブが似合うようなタイプだったから。
「須賀さん、いらっしゃいませ。
そちらの方は初めてですね、どうぞ」
仕事用の顔になった澪ちゃんがSARASAのドアを開けて2人を案内する。
ドアの向こうで須賀さんを歓迎するサラサさんの声が聞こえた。
「澪ちゃん、」
早坂が私を呼び捨てにしたことを聞かれている。
もしかしたら気づいたかもしれない。
「大丈夫、塩ぶっかけてくるだけだから」
ドアノブに手をかけたまま、澪ちゃんが不敵な笑みを浮かべた。
あぁ、完全に気づいている。
「喧嘩しないでね……?」
私の声に、澪ちゃんは何も言わずに笑っただけで、「おやすみなさい」と言ってSARASAに入っていった。