触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜
好きの種類と重さ。
澪ちゃんの「何もなかった」はすぐに嘘だと気づいた。

SARASAの前で会った翌朝から、早坂とは同じエレベーターに乗り合わせたけど、口数が少なかった。

返事も挨拶も「あぁ」とか「おぅ」とか、それだけ。

でも私から昨日のことを聞く勇気はないから放っておいた。
聞いてもどうせ、何にもならない。
早坂とはあの日、ちゃんと別れ話をしたから、関係はもうただの同期に戻っている。



一方で無事に彼女さんと仲直りをしたらしい茜ちゃんは、それはもう晴れ晴れとした表情で仕事に励んでいた。

聞けば当分、彼女さんが茜ちゃんの家に泊まるらしい。



「帰ったら好きな人がいるっていいよね」

「ミカさんも一緒に住めばいいじゃないですか」



あっさりと言われた。

澪ちゃんと一緒に住むことを想像してみる。



「お互い仕事の時間合わないから一緒に住むのは難しいと思う」

「……ミカさん、それ、澪ちゃんに絶対言っちゃダメですよ。
可愛くねーです。0点です」



休憩室の掃除ついでに総務のお菓子箱を漁りながら、茜ちゃんが吐き捨てた。

同性からのジャッジは辛口だけど妙に納得してしまう。

ーー可愛くないのか。

でも現実問題、生活リズムが合わないのに一緒に暮らすのは難しいと思うんだけど。



「あ。お互い個室があったら大丈夫かも」

「それも絶対言っちゃダメですよー。ていうかそれ、同棲じゃなくて同居だから」

「何が違うの?」



首を傾げる私に、茜ちゃんが「うわぁ……」とありえないものを見る顔をしていた。

応接用のソファの背もたれ部分に腰をかけてため息をついている。


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