触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜
いつも会社の制服だったから、誰かに私服を見せるのは緊張する。

それが自分よりスタイルがよかったり、センスがあったりするならなおさら。


ーー私、ダサくないかな。



そんな不安を胸にしまって会社通勤に使うルートの電車に乗り込み、繁華街まで移動する。

早起きしたであろう若者が集うゲームセンターや、先週私がふられた映画館の間を抜けて、「SARASA」の前に着いたのは約束の時間の10分前だった。

澪ちゃんの姿はまだ見えない。




連絡をしようか迷ったけれど、10分ならすぐだし急かしているみたいに思われたくなかったから、大人しく待っていることにした。



飲み屋が立ち並ぶこの辺りは、この時間帯、駅前に比べて特に人通りが少ない。

SARASAも太陽の下で見ると、全く違うお店に見える。



ふと今しがた通ってきた方面を見たら、茶色い長い髪をハーフアップにまとめて、ファーのついたジャケットとパンツを着ている女の人がこちらに向かって歩いてきた。

私が着ている服と全然系統が違う。


ーーあれが澪ちゃん?


いつも私が見ている彼女は、長い髪を後ろにまとめてタキシードみたいなかっちりした服を着ているから、いまいち確信がもてない。



目を細めて焦点を合わせてみる。

顔がよく見えない。

あまりにじろじろ見ていたせいか、女の人がこちらに気づく。



「ミカさん!」



ーー澪ちゃんだった。
< 19 / 259 >

この作品をシェア

pagetop