触らないでよ！〜彼氏に振られたその日、女の子(？)に告白されました〜
「百瀬さんって、澪ちゃんと付き合ってるの」



ーーあぁ、ほら、絶対聞かれると思った。
この人は私と早坂が付き合っていたことを知っているのだろうか。

茜ちゃんに軽い奴だと思われているという言葉が、呪いのように頭の中でじわじわ広がってくる。



「すごい恥ずかしい話していい？」

「はい？」



須賀さんの質問に答えないでいたら、自虐ネタでも話すかのように笑いながら言った。



「俺、澪ちゃんにフラれたことある」



コーヒーの出来上がりを知らせるピーッという音が休憩室に響く。

須賀さんが振られたと聞いて、複数の疑問が頭をよぎる。



「最初ね、カウンターで飲んでた頃、まんまと女の人だと思ってたんだよね。
他の客が彼氏いるのか聞いたら、彼氏はいませんって言ってたし。

思い切ってというか酔った勢いで告白したら、私は同性愛者じゃないから須賀さんに対してそういう気持ちはないですってキッパリ言われて。

なんのことかわからなかったんだよね、酔ってたから。でもよくよく考えて、もしかして男なの？って聞いたら、そうですよって。

最初に言えよって感じじゃない？」



意外過ぎた。
須賀さんが澪ちゃんに告白して振られていることもそうだけど、酔った勢いを借りてそういうことをする人には見えないから。

仕事ができる、真面目と言われていた人だから、月末業務でこの人と話すときは他の人と話すときよりも緊張していた。だから、こんな失敗談があるなんて知らなかった。


失礼だとは思いながら笑ってしまった。
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