触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜
うぅぅ、と呻くように泣いた振りをしながら、さりげなくチーズの盛り合わせのなかのブルーチーズだけを端に寄せる。



「ミカさん、次、何か飲みますか?」



名前を呼ばれて顔をあげると綺麗な顔立ちのバーテンダーがこちらを見ていた。



「あぁあああ、澪ちゃああん」



なんでオカマバーにこんなキレイな女の子がいるんだろう。
初めて入ったときから常々疑問だった。

お酒のせいなのか、泣き真似をすると本当に涙がにじんでくる。
空になったグラスを澪ちゃんに渡して「ネイクドレディ」をオーダーする。
ラム酒をベースにした「裸の淑女」という意味をもったカクテルだ。



「かしこまりました」





柔らかく笑って、澪ちゃんが空のグラスを引っ込める。

その隣にいるヤニ臭いサラサさんが「もっと高いの頼みなさいよ」とヤジを飛ばす。



「うるせーオカマは黙れ」



端に寄せておいたブルーチーズをサラサさんに投げる。
「信じらんないサイテー」と喚いてよけるサラサさんが、トドメの一言をぶつけてくる。



「そんなんだから男に逃げられんのよ」



ーーうるさいな。

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