触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜
「はぁーーー、やっと安眠できる」



澪ちゃんに急かされるまま、キャリーケースに数日分の服を詰め込んで車の助手席に座る。

隣では澪ちゃんが私の手を握ったまま上機嫌でハンドルを動かしていた。



「ほんとに何日も泊まって大丈夫? 邪魔じゃない?」

「なにが? むしろ半永久的にいてほしいくらいだけど」

「だったらいいんだけど……」



車は国道沿いを走って、SARASAのある繁華街を通り過ぎていく。



「でもミカさんが振られた以外で泣いたの初めて見た。あ、この前の元彼は別として」

「……そう? 私結構よく泣くよ」

「えー、例えば?」



そう言われて、真っ先に澪ちゃんとできなかったときのことを思い出した。

先に進もうと思えばできたのに、澪ちゃんは「嫌われたくない」と言って我慢してくれた。

あのとき澪ちゃんに申し訳なくて少しだけ泣いた。




「……いや、あれはもう済んだことだし!」



今は無事にやり遂げたし!



「なに、何の話」



勝手に自己完結している私を、澪ちゃんがびっくりした顔で見ている。

今さら握られた手に意識が向く。

ふいっと窓の外を眺める。
夜景キレイだな、なんて無理やり思う。



「なんで今ここで照れたの!?」



澪ちゃんが声をあげて笑った。

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