触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜
「別に俺、ミカさんが太ったとか胸小さいとかで嫌いになったりしないけどね」



言われた通りに髪を乾かしてきた澪ちゃんが、換気扇の下でタバコをふかしながら笑った。

ーーまだその話するのか。

澪ちゃんからもらったビールの缶を握りながらむっとする。



「そんなこと言って、澪ちゃん女装するとき胸大きいじゃん。
ほんとはそれくらいあったほうが嬉しいんじゃないの?」

「いや、大きいと重くない? シェイカー振るときすごい邪魔。肩こるし」

「はぁ!? はぁあ!? ケンカ売ったね今!」

「……ミカさん酔ってる?」

「まだ酔ってない!!」



飲み干した缶を握りつぶす。

女装したときの澪ちゃんは私が持っていないものを全部持っていて、それがうらやましくてずるいと思ってしまう。

こんな身長低くてスタイルも顔も平均的な私がSARASAで泣きながら相談できたのは、澪ちゃんがあまりにも同じ女性としてかけ離れていたからだ。

女同士で圧倒的な差を見せられると、張り合う気すら起きない。

まぁ男だったわけですが!
それはそれで悔しい。




「俺、ミカさんの体好きだけど」

「うるさい、知るか、ばか」

「もう、口悪いなー」



罵倒されているのに澪ちゃんが嬉しそうに笑う。

新しいビールを持ってきてぺしゃんこになった缶を引き抜いた。



「それ飲んだら寝ようね、明日も仕事でしょ」



頭を撫でられて、子供扱いされた気になって、私はまた機嫌を損ねた。

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