触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜
この1、2週間の私は、誰が見ても沈んで見えたようだ。

会社に着いてから、会う人会う人に「体調はもう大丈夫なのか」と聞かれ続ける。
あまつさえ、いつものカフェの店員さんにまで「元気になってよかったです」と安心された。


そのすべてのやり取りを横で見ていた茜ちゃんが、なにか言いたそうに含み笑いをする。



「……なに?」

「いいえ、なにも?」



昼食を食べ終えた後、試飲として渡されたエスプレッソの紙コップに口をつける。












午後の仕事をしながら、今日の夕飯について考える。

澪ちゃんは今日もお店を休んでいるから、また学食になるかもしれない。

でもこの前のようにいろんな人に囲まれて食べるのは落ち着かないし、何よりあの中に澪ちゃんの電話に出た人がいたかもしれないと想像すると、胸が痛くなってくる。



自炊、頑張ってみようかな……。

料理をほとんどしないせいでレパートリーが無いけど。

誰かと付き合っているとき、もう少し人に振る舞えるような料理を頑張っておけばよかった。

そもそも一人暮らしの時点で……。


自分には関係ないと逃げてきたツケが今突然やってきて、頭を抱える。

澪ちゃんも料理はしないと言っていたけど、手先は器用そうだから料理も早く覚えそう。



今すぐにでもレシピサイトのアプリをダウンロードしたい気持ちを抑えて、目の前のパソコンに集中する。

制服のポケットの中でスマホが震えた。

今日もまた、澪ちゃんがここまで迎えに来てくれるらしい。

届いたメッセージを読んで顔が知らずにほころぶ。

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