触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜
「澪ちゃん、これ、まだひっくり返しちゃダメかな」

「俺、生でもいけるよ、大丈夫」

「いや、いくな。お腹壊すから」



使った包丁とまな板を洗いながら澪ちゃんが言うから本気で止めた。

玉ねぎのみじん切りに泣いたり肉ダネの生焼けを心配したり、料理初心者だから、手際がいいとはいえなくて。

さらに言えばメインを作るのに精一杯で、スープは作ってないし、付け合わせは野菜を切っただけの簡単なサラダだったけどなんとか完成した。



普段はパソコンしか乗っていないテーブルを片付けて、出来上がった料理を運ぶ。



「はぁ、めっちゃ美味そう」

「なんかごめんね、ハンバーグばっかり集中しちゃってスープ作るの忘れちゃった」

「いいのいいの、お酒飲むし」



いただきますを言い合って、終始上機嫌な澪ちゃんが缶ビールを開ける。

ごはんも食べてお酒も飲むのによく太らないな……。
私はカロリーを気にして、ごはんよりもお酒を優先したのに。



「うまー! なにこれめっちゃ美味い!」



澪ちゃんが一口食べるまで内心ドキドキしていたけど、美味しいの一言で全て報われた。



「やっぱり牛脂入れてよかったね」

「ミカさん、料理上手じゃん。なんで今までして来なかったの」

「洗い物めんどくさくて」

「じゃあ、それは俺がやるからまた作ってよ。一緒に作ろう」



二度目の手料理を作る約束をして、深い意味はないはずなのに照れる。

澪ちゃんの家に泊まって2日目なのに、こんなに楽しいなら同棲もできるかもしれないと軽々しく思ってしまった。

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