エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
窓際の席に案内され、ひとり掛けのソファに腰を下ろす。ブラウンのベロア生地のソファにはオリーブ色やオレンジ色のクッションが置いてありオシャレに感じた。
一応私もメニューを手に取ったのだけれど、オーダーはお母さんがしてくれた。
「おすすめがあるのよ」というお母さんからの言葉は、なにを選んだらいいのか頭を悩ませていた私にとっては救いそのものだった。
運ばれてきたのはアフタヌーンティーで、その立派な料理に気負取りする。
一段目のサンドイッチも温料理もデザートも、どれも色鮮やかでおいしそうではあるものの、こういった場所に慣れていないので正しい食べ方がわからず焦る。
壁際に立つスタッフの視線すら監視に思え、せっかく解けた緊張がまた蘇っていた。
けれど、とりあえずお母さんに倣いながら食事を進めていると、そのうちに料理のおいしさや温かい紅茶、お母さんとの雑談で気持ちが和らいだ。
悩みは人に話すと半減すると聞くけれど、それは緊張も同じなのかもしれない。
「すみません。もしお行儀が悪いことをしていたら教えていただけますか?」と、失礼かと思いながらも最初にお願いしたのだけれど、お母さんから何かを指摘されることもなく、デザートの載った三段目を残すのみとなりホッと胸を撫でおろした。