エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
お母さんが振ってくれる話題は、気軽にできるものがほとんどだった。
最近見たドラマや映画の話、趣味の話、私が今日雑貨屋さんを覗いたという話題から発展したインテリアや小物の話。
お母さんの中では、私は四宮さんの交際相手だ。
内心、私の学歴や家族のことだとか掘り下げて聞かれたりするのかなと身構えていただけに、普段友達や先輩とするような話題選びはとても助かった。
もしかしたらこれもお母さんが気を遣ってくれてのことかもしれない。
「お菓子作りをしてみたいなぁとは思うんだけどね、全部をひとりでやりきれる自信がなくてなかなか挑戦できずにいるのよ。だから鈴奈ちゃん、時間がある日にでも一緒に作らない?」
その誘いの返事は少し迷った。
四宮さんとの関係は嘘なんだし、ここで安請け合いはしない方がいい。……とは思ったのだけれど。
「そう、ですね。機会があったら」
キラキラとした笑顔で返事を待つお母さんを前にしたら、断るなんてできなかった。
とても喜んでくれたお母さんに「もちろん、簡単なものしか私も作れませんが……」と続けた声は届いていなかった気がして少し不安が残ったりもしたのだけれど、最初の緊張が嘘のように終始楽しい時間だった。
そして、食事開始から一時間半が経ち、そろそろ席を立とうかという雰囲気が漂い始めた頃、お母さんが言った。
「それで、鈴奈ちゃんは昴貴のどこを気に入ってくれたの?」
「えっ……」