エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
「ううん。鈴奈ちゃんが本当に昴貴を好きでいてくれているんだって伝わってきて、すごく嬉しかったわぁ」
「え……」
「ありがとうね。これからも昴貴をよろしくね」
返事をする間もなく「私とも仲良くしてね」と笑顔で言われ、うなずく。
そのままホテルを出たところでお母さんと別れ、ひとり帰りの電車に揺られながら今日のことを考えていた。
とりあえず、お母さんにご馳走になってしまったので四宮さんにあとでメッセージで伝えてお礼を言わないと。
恋人ということになっているのだから、どんな話をしたのかも共有しておいた方がいい。
今日、お母さんとした話題は……と思い出していて、最後の会話が蘇った。
『ううん。鈴奈ちゃんが本当に昴貴を好きでいてくれているんだって伝わってきて、すごく嬉しかったわぁ』
私はあの時、恋人という演技をしていなかった。
私が知っている四宮さんのいいところを素直に言葉にしただけだ。
それをお母さんがああ捉えたのなら……そうなのだろうか。
私は四宮さんが好き……なのかな。
今まできちんとした恋愛経験がないだけに、自分の気持ちに困惑する。
四宮さんに告白されてから彼と過ごした時間の中で、私自身、そういう感情が心の中にヒラヒラと浮かんでいることには気付いていた。
けれどそれはふわっとした、実態の伴わない、手を伸ばせばどこかへ消えてしまうような不確かなものだった。
そんな、曖昧だった私の感情を、お母さんがしっかりと見つけ、握らせてくれたような気分だった。
意図せずハッキリと気付いた恋心に、胸の真ん中がむずむずしてきて堪らない気持ちになる。