エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
十一月四週目の水曜日。キャンペーン終了まであと一週間というところで会議が開かれた。
ここまでの実績的には悪くはないという四宮さんの言葉にはとてもホッとした。
キャンペーンが始まった時に掲げられた目標の数字は、正直高すぎると感じていたけれど、どうやらそれも無事クリアできそうだという。
副社長が自らわざわざ支店に出向くという非常事態。支店の存続を危惧して社員が必死になるのも当然かもしれない。
それでも、四宮さんの顔を立てるためにもここで失敗はできないと社員一丸となって頑張れた気がするので、彼の人徳ももちろんあったのだと思うと嬉しく感じた。
会議は一時間弱で終わり、あとは帰るだけとなった社員がぞろぞろと出て行く。私もその波に乗り、更衣室で着替えを済ませ、会社を出ようとしたところで四宮さんの姿が目に留まった。
バックヤード側にある社員用出入り口から少し離れたところに立っているのは、四宮さんと浅尾さん。
日中は何台もの車が並び、エンジニアたちが整備している場所だけれど、閉店後の今そこにあるのは一台だけ。四宮さんがいつも乗っている黒の高級車だった。
その車の前で、ふたりはたまに笑いながら会話をしている。