エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
ここは屋根はあるものの壁は東と南側しかなく、冬の風はしのげない。
十一月下旬の気温は低く帰り支度をした私ですら寒いと感じるのに、ふたりはそんな寒さなんて気にする様子もなく話していた。
その様子を見ていて、ああ、お似合いだなぁと思う。
大人の男女といった雰囲気は、私が割って入れるようなものではなかった。
そういえば同期だって言ってたっけ……と思い、いつかの言葉を思い出し気持ちが重たくなった。
『四宮くんはさ、なにかを隠されたりとかがすごく嫌いみたいなの。あとで面倒なことになるのが嫌みたい。だから、恋人にするのはハキハキした女性ばかりだったけど、結局続いて数ヶ月だった』
『正直、恋愛には苦手意識があるんだ。俺は、相手が抱え込んだ気持ちまで察してやることができないから、今まで意図的にハッキリした性格の女性と付き合ってきた。気持ちを我慢されて後々面倒なことになるのが無駄だと思ったから』
四宮さんには、浅尾さんみたいな人が似合うんじゃないのかな……と考えハッとする。
自分がどうして今、こんなことを考えたのかがわからなかった。
だって、この問題は解決したはずだ。
『タイミングを計っているうちに、チャンスを逃して、溜め込むしかできなくなって結局変な時に爆発したりして面倒なことになったり……きっと四宮さんが好んできた女性のタイプとは真逆です』
四宮さんの車の中でそう白状した。
『今までがそうだったというだけで、この先もそうだというわけではない。俺なりに藤崎のことをよく見てきてそれなりの理解はしているつもりだし、藤崎がさっき自分で言っていたような性格だということも知ってる』
うじうじした暗い女だってカミングアウトした私に、四宮さんはそう言ってくれた。一ヵ月ほど前のことだ。