エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~


「お邪魔します」

どうせインターホンを押したところで出てこないのだからと、合鍵を使って入った氷室さんの部屋。

洗面所を覗くと洗濯物がたまっていたので、ついでにキッチンや洗面所のタオル系を集め洗濯機に入れた。
洗剤と柔軟剤を所定の位置に入れてからスタートボタンを押し、ひとつ息をつく。

それから、声をかけたところでまだ起きないだろうけれど……と思いながらも寝室を覗こうとして、その途中で驚きのあまりビクッと大きく肩が跳ねた。

何度瞬きをしても目の前の光景が変わることはなく、ドッドッと鳴る胸を上から押さえながら呼吸を整えた。

リビングにある大きなソファに、なぜか四宮さんが寝ている。

せっかくの遮光性の高いカーテンは開けっ放しで、レース越しに柔らかい光が室内に入り込んでいる中、四宮さんは穏やかな顔で目を閉じていた。

一体どういう状況だろう……としばらく考えてから、今が十一月だと思い出しハッとしたけれど、四宮さんの上には毛布が二枚かかっていた。

床暖房も入っているし、加湿器も稼働している。加湿器は氷室さんひとりの時には「しょっちゅう給水って騒ぐから面倒くさい」という理由でコンセントすら抜かれているので、きっと四宮さんがセットしたんだろう。

とりあえず、風邪を引くような環境ではないと判断すると同時に昨日の電話を思い出した。

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