エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
一緒に夕飯をとって、そのまま泊まったということなんだろう。
今日も仕事なのに前日友人宅に泊まる、という行動は真面目な四宮さんからは想像がつかないけれど、四宮さんと氷室さんは大学からの旧知の仲。話が盛り上がったのかもしれない。
加湿器の機械音がわずかに聞こえるリビング。
起きるそぶりを見せずに眠る四宮さんに、胸がキュンと鳴る。
こんな無防備な姿を見るのは初めてだから、なんだか見てはいけないものでも見た気分だった。
少しくらいは近づいてもいいかな……。
四宮さんの意識がないのをいいことに、数歩近づき、彼から一メートルほどの場所、ソファの前に膝をつく。
氷室さんと違って四宮さんは少しの物音や気配で目を覚ましそうなので、本当にそーっと近づき、覗き込んだ。
いつもはこんなにじっと見つめるなんてできないので、ここぞとばかりに寝顔を眺める。
綺麗な顔立ちだとは思っていたけれど、やっぱりこれだけ近くから凝視してもとても整っていて、感嘆からため息が落ちそうになった。
ただ見つめているだけだっていうのに、自分の心臓がトクトクと弾んでいることに気付く。
そういえば、中学や高校の頃、憧れの先輩を遠目から眺めているだけで嬉しそうに顔をほころばせていた友達がいたっけ、と思い出し、今更ながらその気持ちを理解した。