エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
つい二日前、浅尾さんに抱いたやきもちが再度ムクリと頭をあげたのを感じ、頭を振ってそんな感情を振り落とす。
四宮さんが再三してくれている告白を、立場の差だったり自分の生い立ちだったりを理由にして受け入れることができず待たせているのは私だ。
それなのにこんな嫉妬は勝手すぎる。
そう反省しながらも……さっき、ふたりの女性の名前を言ったときの四宮さんの掠れた声を思い出し、唇をキュッと噤んだ。
勝手すぎるのはわかってる。わかっているけれど。
「でも、私の名前も呼んで欲しいって思っちゃったんです」
関係が先に進むのを止めているのは私なのに、自分の欲だけは主張してわがままを言うなんてどうかしている。
こんな傲慢な自分を知るのは初めてで、ひどい自己嫌悪に襲われ目を伏せる。
氷室さんの女性関係を間近で見てきたから、恋愛にそこまで夢を抱いていたわけではないと思う。むしろドロドロした部分ばかり見せられて、ちょっと敬遠していたほどだ。
それでも、やっぱりどこかで恋心は綺麗なものだと思っていたらしく、自分の胸の中に次々と溢れ出るわがままに落胆していた。
みんなこうなんだろうか。
それとも、私の恋心だけがこんなに汚れているんだろうか。
見ているだけで満たされたと思った直後だっていうのに、四宮さんのひと言で独占欲が生まれて気持ちがぐちゃぐちゃだ。
高校の頃、見ているだけで嬉しそうな顔をしていた友達も、こんな気持ちを持て余していたのかな。いったいどうやってこの暴れる感情を抑え込んでいたんだろう。
そんな風に考えひとつ息をついた時。
静かだった部屋に「名前で呼んでもいいのか?」と声が聞こえ、勢いよく顔を上げた。
すぐに四宮さんと目が合い、びくっと肩が跳ねる。