エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
横になったままの彼は、私をじっと見つめ……それから顔をほころばせた。
「鈴奈」
いつ起きたのかもわからず、でも四宮さんの声で発声された名前があまりに衝撃的すぎて、驚いているのに声も出ない。
ただ、口を開いたり閉じたりを繰り返すことしかできずにいる私を見た四宮さんは、少し笑ってから体を起こした。
「もう、体調はいいのか?」
そう聞かれ、昨日の夜の電話を思い出す。
そういえば頭痛がするからと断ったんだった。
「あ、はい……大丈夫です。あの、朝ごはん食べますよね?」
「ああ。昨日の夜、いくつかパンを買ってきたからそれでいい」
「じゃあ、適当にサラダと付け合わせを作りますね。すぐ準備するので少し待っててください」
四宮さんは性格上、この後一度自宅に帰って着替えを済ませてから出社するだろう。
となれば、ゆっくりしている時間はない。
氷室さんに声をかけるのは後回しでいいと判断してキッチンに向かう途中、後ろから呼ばれた。
「鈴奈」
「あ……え?」
再び呼ばれた名前にどう反応していいのかがわからず、とりあえず振り向くと、立ち上がった四宮さんが私を見て微笑んでいた。
「これからは遠慮なく名前で呼ばせてもらう」
間違いなく、さっきの独り言を聞かれていたんだとわかり顔が沸騰しそうに熱を持つ。
四宮さんはいつから起きていたんだろうだとか、私がじっと寝顔を眺めていたことはバレているだろうかだとか疑問で頭がいっぱいになっていた時、寝室から氷室さんが出てきて救われる。