エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
「あー……鈴。頭大丈夫か? っていうか今は俺が頭が痛い気がする……」
よろよろとして壁に肩をぶつける氷室さんに、四宮さんが呆れたような眼差しを送っていた。
「おまえのそれは二日酔いだろ」
「あれ。四宮いたの? 珍しいじゃん」
「おまえのせいだろ。昨日も散々飲んでから気持ちが悪いだのなんだの言うから、俺が帰ったあとでもしもなにかあっても夢見が悪いと思っただけだ」
「えー、優しい。惚れそう」
頭が痛いと言いながらもヘラヘラと笑う氷室さんと、心底嫌そうに対応する四宮さん。
ふたりの会話を聞きながら、サラダと卵料理などを作ってテーブルに並べた。
四宮さんが買ってきてくれたというパンは、有名店のクロワッサンやデニッシュ食パンで、紙袋に書いてある店名のロゴを見て感動する。
三人で食べるには十分な量があったので、四宮さんは昨日の夜相当買い込んできてくれたようだった。
きっと、それ以外にも何かしら買ってきてくれたのだろうけれど、シンクの上にその形跡はない。
今まで片づけのできる男性が周りにいた経験がないので、きちんと片付けてくれたのかと感心した。
「いただきます。あの、パンありがとうございます。ここのお店、よく雑誌に載っていていつか食べてみたいと思ってたので嬉しいです」
そう告げると、隣に座っている四宮さんが目を細める。
「いつだったか、パン屋だとかカフェを回るのが好きだって言ってたのを思い出したんだ。鈴奈が喜んでくれてよかった」