エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
「俺も人のこと言えないから、今まで言わなかったけど。捨てた女の数とか俺と張るんじゃねーかな。結構血も涙もない別れ方するから相当恨まれてると思う」
耳で拾った氷室さんの声が頭で処理できない。
捨てたって……血も涙もない別れ方するって……私の持っている四宮さんのイメージからはあまりにかけ離れすぎていて、告げられた言葉と彼が繋がらない。
氷室さんが嘘をつく人ではないと知っているからこそ、どうしていいのかわからない。
ぐるぐると、思考だけじゃなく視界まで回るような錯覚に陥り、カートを持つ手に力をこめ体を支える。
氷室さんが今言ったこと全部が本当だとしたら。
今まで四宮さんの私に対しての言動は、嘘だったってこと?
『振られたのかと思った』
そう、不安そうに浮かべた微笑みも?
『気付かない振りをして帰った方が藤崎はいいんだろうとも思った。けど、藤崎がひとりで泣くのは俺が耐えられない』
追いかけて、抱きしめて言ってくれた言葉も?
――全部、嘘だったの?
過去……もしくは、今も、四宮さんの本質がそうだったとして。女性関係がひどかったとして。
その中で私だけを特別に想ってくれている可能性を信じられるほど、自分に自信は持てない。
これまで、四宮さんが私に優しくしてくれるのも、時間を割いてくれるのも、彼の告白を信じていたから受け入れられた。
好きだという言葉を、真摯な眼差しを信じたから。
でも、そこが揺らいでしまった今、なにもわからなくなってしまい……どうしていいのかがわからない。