エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
先週は多忙で支店には来られなかったから、約十日ぶりの四宮さんに、胸の奥がキュッと苦しくなる。
そんな胸の前で手を握り締めながら「あの、四宮さ……四宮副社長」と声を出す。
けれど、四宮さんは一度私に視線を向けたあと、すっとその目を逸らしバックヤードの方へ歩いて行ってしまった。
支店は車道に面しているとは言え、今は信号の関係か車の通りは少ない。風も強くないし、聞こえなかったわけはなかった。
いつもの四宮さんだったら、足を止めて微笑んでくれる。
なのに、どうして……と頭が真っ白になりながらも考えて、氷室さんの言葉を思い出した。
『捨てた女の数とか俺と張るんじゃねーかな。結構血も涙もない別れ方するから相当恨まれてると思う』
もしかしたら、今がまさにそうなんだろうか。
メッセージの返事をしなかったから嫌われたのかもしれない。
私がいつまで経っても告白の返事をしないから、さすがの四宮さんも嫌気が差したのかもしれない。
どんどんとマイナスな考えばかりが頭の中を埋めていき、その重たい雰囲気に溺れそうになる。
このまま……もしもこのまま私からなにも行動を起こさなければ、四宮さんとの関係は終わるんだろうか。
「嘘……そんな簡単に?」という声が、自然と漏れていた。