エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
倍以上の重力がかかったように重たく、胸のあたりにあったそれは私の色んなものを壊しながらどんどん下に落ちていくみたいだった。
……痛い? ……うん、痛い。
これが失恋の痛みなのかと思い、唇をキュッとかみしめる。
私は初体験だけど、こんな痛みを、今傘を差している人も差していない人も何度も経験しているのかと思うと頭が上がらない思いだった。
「……よし」
なんとなく頭をシャキッとさせたくなり、傘を閉じる。
もう失恋しているのだとしても、今までみたいにタイミングを逃してしまうのは嫌だ。日中、支店の駐車場で決めた覚悟は変わらない。
本当の四宮さんがどんな人でも、もう私に興味をなくしたのだとしても、それでもこのままなんて嫌だ。
たとえもっと傷つくことになったとしても、いつまでも受け身でいるのではなく、自分から向かっていきたい。
とりあえず、部屋で気持ちを落ち着かせたらメッセージを送ろう。返信がなかったら、電話をしてみよう。
考えてばかりで動けないまま終わるんじゃ、今までと変わらない。
それじゃダメだ。
そんな決意を胸に、ずんずんと歩きマンションに着いた時、建物の前に立つ四宮さんに気付いて驚く。
今の今まで、どんなメッセージを送ろうと考えていただけに、突然、私の妄想の中の四宮さんが具現化して現れたようで言葉が出なかった。
立ち止まった私に気付いた四宮さんは、なぜかやや眉を寄せたあとでこちらに近づき、目の前で足を止めると自分が差していた傘を私に傾けた。