エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
氷室さんに話を聞くまでだったら、四宮さんのこの行動に、とても真面目な方なんだなと感心しただけだったかもしれない。
でも今は……氷室さんから聞いたイメージとあまりに違う気がして、そのちぐはぐさに本当の四宮さんがわからなくなる。
『四宮さん案外遊んでるからなぁ』
本当に? ただの遊びでしかない私相手に、こんな手間をかける……?
思い出すのは、いつかの車内。
『振られたのかと思った』
弱気に微笑んだ四宮さんが本当じゃなかったなんてこと、あるの?
私が胸が張り裂けそうなほど切なくなったのは、あの時、四宮さんの心に触れた気がしたからだ。四宮さんの、紛れもない本心に。
ゆっくりと見上げると、四宮さんは私を見つめたまま返事を待っていた。
その真剣な瞳は、今まで何度も見たもので……それに気づいた途端、保身のため臆病になっていた気持ちがムクムクと起き上がったのを感じた。
本当のことを確かめるのは怖いと思った。
でも、本当に怖いのは、本人に聞きもしないで決めつけることかもしれない。
最初からきっと、私が信じるべきなのは四宮さん本人の言葉だった。
「その前に、聞いてもいいですか?」
意を決して言うと、四宮さんはやや驚いた顔でうなずいた。
「ああ」
「四宮さんが氷室さんの部屋に泊まった翌日の朝のことなんですけど。その時、四宮さん、寝言で女性の名前を呼んでいたんです。〝ゆり〟〝かすみ〟って。あとから氷室さんに聞いたら、四宮さんが遊んだ女性じゃないかって言われて……四宮さんも結構遊んでるからって」