エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~


緊張しているからか、喉がカラカラだった。
それでもなんとか声にしたあと、じっと見上げて「本当ですか?」と聞く。

振りおちる雪はいつの間にか大粒になり、地面を濡らしていた。
傘を差した通行人が何人か通り過ぎていく中、わからなそうに目元をしかめた四宮さんだったけれど、ようやく答えが見つかったように「ああ」と表情を明るくする。

「まず、名前は多分、花の名前だな。来年発売予定の車の名前を花からとろうという話になってるから、最近は寝る前によくそれについて考案していた。だから夢にまで出てきたのかもしれない」

「来年発売予定……あ、女性をターゲットにした四駆の……?」

そういえば浅尾さんが話していたと思い出し聞くと、四宮さんがうなずく。

「英字表記の車が今は主流だから、あえてという意見があがったんだ。ただ、響きは日本語でも表記は英字にした方が海外受けを考えた場合はいいという意見もあるし、まだ決定はしていない。浅尾あたりはもう、仮印刷したパンフレットを入手していそうだけどな」

「あ……はい。もう持ってました」
「やっぱりな。まぁ、社外秘ってだけで社員に漏れる分には構わないが……本当に浅尾は俺と変わらないタイミングで社内の動きを知ってるから、どこのルートから情報入手しているのか不思議で仕方ない」

やれやれといった風に話した四宮さんが「ああ、話が逸れたな」と仕切り直すので、ハッとした。


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