エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
このままでは風邪を引いてしまう……と部屋に上がってもらったはいいものの。
今日氷室さんは夕飯はいらないってことだったから特に材料を用意していない。
きちんとした料理が作れそうもなくて焦った私に、四宮さんは「鈴奈が、キッチンに他人が立つのが嫌じゃなければ俺が適当に作る」と言い、本当に作ってくれた。
ありあわせの材料を使って出来上がったのは、しめじとベーコンのクリームパスタに、キャベツとかぼちゃ、にんじんの野菜スープ。
中途半端に残っていた野菜を使い切ってもらって助かった。
手際がいいので普段から料理しているのかと聞くと、「気が向いた時だけ」と教えてくれた。それにしてはとてもおいしかったので、元々料理のセンスがあるのだと思う。
ようやく暖房の効いてきた部屋で夕飯を食べ、洗い物を済ませたところでコーヒーを入れた。
ローテーブルの上にカップを置き、ソファに座ってからひとつ息を吐く。
「あの、メッセージ、返事をしなくてすみませんでした。誤解していたのもありますが、支店の駐車場で話しかけようとした時、四宮さんが意識的に私に背中を向けたように思えたので……避けられている気がしてしまって」
誤解だとはわかったけれど、まだ残っているわだかまりもある。
もう、あんな風に勘違いしてすれ違うのは懲りたので正直に言うと、四宮さんはすぐに思い当たったのか「ああ、あれか」とうなずいた。