エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
「……違う」
信じられないくらい小さい声だったので、言いすぎたかと思い私も気持ちを落ち着かせる。
反省はしてほしいけれど、委縮させたいわけじゃない。
「氷室さん、昔言ってたじゃないですか。義務とか責任とかそんなの関係なしに一緒にいられる関係が本当だって。私は、この十年間そうしてきたつもりだったのに、氷室さんが違ったなんて、悲しいです」
そう伝えると、氷室さんは少ししたあとでガタッと立ち上がり、そして。
「……ごめん。よく考えたら俺にとってもそうでした。鈴、許して。この通り」
いつものヘラヘラした笑顔で頭を下げた。
その後は、元気を取り戻した氷室さんがワインを開けだしたせいで、車で来ていた四宮さんは帰る手段をなくし、泊まることとなった。
それでも押し付けられるワイングラスを断らなかったのは、四宮さんも氷室さんの様子がおかしいことを心配していたからだと思う。
そして、問題は翌朝八時に起こった。