エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
十二月という季節柄か、イルミネーションが飾り付けられ、ノームの置物まで見つけたときには頬が緩んだ。
きっとお母さんの趣味なんだろう。
そう思い話題に挙げると予想は正解だったようで、お母さんは「気付てくれたの? 可愛いでしょ。あれ、先週お店で見かけて一目惚れしちゃったの」と嬉しそうな笑顔を浮かべた。
そんな賑やかで、でも和やかな〝家庭の雰囲気〟が止まったのは、お母さんの言葉がきっかけだった。
「そういえば、鈴奈ちゃんはひとり暮らしだって言っていたけど、ご実家はどちらなの? 離れて暮らしているならご両親も心配されてるでしょう? 女の子なら余計よね」
お母さんが眉を下げ言った言葉に、心臓がギクリとする。
本来、初めから言わなければならなかったことを今まで黙っていた後ろめたさからだった。
最初は、四宮さんに頼まれたからだったし、そこからはタイミングを逃して……と言い訳はいくらでもできるけれど、本当の理由は、私が怖くなったからだ。
四宮さんとの関係が終わってしまうかもしれないと思うと怖くなって……もう少しだけと欲張ったせいだった。
向かいに座っているお母さんと、隣に座る四宮さんからの視線を受けながら、一度目を伏せる。
そして、膝の上に置いた手をギュッと握りしめながら顔を上げた。