エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~


「親戚の方は? 周りに面倒を見てくれる人はいたの? ほら、お母様が入院したら鈴奈ちゃん家にひとりになっちゃうでしょう? まだ学生だったのに……」

心配そうに聞くお母さんに、言いにくく思いながらも答える。

「母は学生時代の素行の悪さが原因で勘当されてたので、親戚とは疎遠になっていて……父方はもう離婚していたので。お見舞いにくるような親戚はいませんでした」

「じゃあどうしたの……? 高校生の鈴奈ちゃんひとりで……」

お母さんは悲愴感を顔中に浮かべていて、今にも泣き出してしまいそうで慌てて口を開いた。

「大丈夫です。母が亡くなってすぐに私は就職しましたし、それに氷室さんのお父さんが色々面倒を見てくれていたので」

「氷室の……?」と、驚いた様子でもらした四宮さんにうなずいた。

「氷室さんのお父さんには、本当に感謝しています。母が亡くなってからは特に色々気にしてくれて、氷室さんたちが振袖を用意してくれたおかげで成人式にも出られましたし、今私が住んでいる部屋の家賃も、援助を申し出てくれて……。私のことを気にかけてくれる人がいる事実にとても救われました」

母が入院して働けなくなってから、氷室さんたちは私たち親子の面倒を見てくれた。
氷室さんは情からだったとして、真面目なおじさんのことだ。責任感からだったのだろう。

でも、おじさんだって被害者だ。
私が甘えていいわけがないし、そもそもおじさんが私に対して責任を感じる必要はまったくない。



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