エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
「両親のことに関しては仕方なかったと割り切っています。でも、私自身は……未だに氷室さんたちに甘えて、ひとりで立つこともできていない状態です」
自分の情けなさになのか、カミングアウトした後の反応が不安なのか、自分自身でも理由がわからない涙はどんどんとこみ上げてくるけれど、泣いている場合じゃないと顔を上げる。
私は、同情されるためじゃなく、今まで言わなかったことへの謝罪に来たのだから、ひとりで泣いているのは違う。
真っ直ぐに視線を上げ、唇をキュッと結んでから口を開いた。
「今回、この話をしなければと思ったのは……その、四宮さんの家柄がとても立派なので、真剣なお付き合いとなると私の家庭の事情は無視できないと考えたからです。私自身、私のせいで四宮さんたちが嫌な思いをされるのは我慢できません。なので……もしも私のそういう生い立ちや人間性が四宮さんご家族にマイナスになるのであれば――」
震える声で言い切ろうとしたところを、四宮さんの「問題ない」という声に止められる。
恐る恐る隣を見ると、四宮さんは目を細め私を見ていて、その優しい色をした瞳に息が詰まった。
「俺は仕事の一環として鈴奈に告白したんじゃない。仕事と違って、恋愛感情は、プラスだとかマイナスだとかで判断するものとは俺は思わない。その上で強いて言うなら、俺は鈴奈が一緒にいてくれるならそれでプラスだと思っている」