エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
「今度、お母様のお墓参りにご一緒させてね。今後、母親ぶらせていただくってご挨拶しておかないと。お母様、なにがお好きだったの?」
涙が収まったあと、お母さんに聞かれた。
花だったらガーベラが、食べ物だったらマドレーヌが好きだったと答えるとお母さんは手帳にメモをとっていて、そんな姿がとても嬉しかった。
ケーキを食べ終えたところで、四宮さんに「部屋に行くか」と声をかけられた。
一瞬、部屋ってひとり暮らしをしているマンションかな?とも思ったけれど、ここは四宮さんのご実家だ。彼の自室があって当然だと思い直す。
「はい」
立ち上がり、四宮さんの後ろを歩きだした時、思い出したようにお母さんが声をかけた。
「あ、鈴奈ちゃん。明日お休みだし、泊っていくでしょう? 昴貴の部屋に必要なものは用意してあるから適当に使ってね。昴貴、夕飯は十九時だから、その頃には一度下りてくるのよ」
「わかった」と答えた四宮さんがすぐに歩き出すので、慌ててその後に続く。
お部屋の場所はわからないし、はぐれてウロウロすることになったら失礼だと考えたからだったけれど……頭の中には処理できていない問題があった。
さっきのお母さんの言葉はどういう意味だろう、と考えているうちに四宮さんがドアを開け、私を中に入るよう促す。
おかしいかな、と思いながらも「おじゃまします」と頭を下げて入って目を見張る。
もう家の外観を見た時点で相当なレベルは想像していたつもりだったけれど、やっぱりすごい。