エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
「し、四宮さん……っ」
「〝泊まる〟という言葉が出ていたのに、俺の部屋に入る鈴奈が悪い。俺は、自室に鈴奈とふたりきりで我慢できるほどできた男じゃない」
言いながら、四宮さんが私の着ているワンピースのファスナーを下ろす。
ゆっくりと下げられていくファスナーに混乱しながらも、今の言葉は嘘だと思った。
だって、四宮さんはできる男性だ。
仕事でどんなトラブルが起こっても涼しい顔で対応してしまう、完璧な人。
そんな四宮さんが私相手には我慢できないのだと思うと……嬉しさがこみ上げてきて、緊張だとか恐怖を私の隅へと追いやった。
露わになった背中にキスを落としながら、ワンピースを脱がされる。
そのまま横抱きにされ下ろされた先はベッドの上だった。
下着姿を見られているのが恥ずかしくてうつむいていたけれど、勇気を出して四宮さんをチラッと見上げる。
すぐに視線がぶつかり、それを待っていたように四宮さんが目を細めた。
「なにか言いたいことがありそうな顔だな」
「あ、いえ……その、こんなお膳立てされてるのに、それに気付いてて乗っかるなんて四宮さんらしくないように思えて……」
実家の部屋に泊まるなんて、しかも下着や翌日の服まで用意されているなんて、完全にそういう意味合いだ。
私たちが普通にお付き合いしていると思っているお母さんからしたら、私が四宮さんの部屋に泊まるのは当然だし、服もただ気を遣ってくれただけなんだろう。
でも実際は、想いを伝えあったのだって昨日だし、当然、体を重ねたこともない。
その状態でこの状況は……〝いかにも〟という感じがして、それを四宮さんはあまり好みそうだとは思えなかった。
だからそう伝えると、四宮さんは困ったような微笑みを浮かべた。