エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
でもだからといって、店長に報告するのは……と考えるのは、私が報告することがイコール派遣会社への報告となるからだ。
店長は私に塚田さんへの判断を任せているところがある。それは、塚田さんと一緒に仕事をしている私に頼むのは、ある意味当たり前なのかもしれないけれど、五年目の私には少し荷が重い。
自分の報告次第で塚田さんがクビになってしまうなら、少し我慢しよう、とそちらにシーソーは傾いてしまうのも仕方ないと思う。
「しかし普通、五年目の鈴にそんな役割押し付けるか? 派遣の管理なんか責任だって伴うんだから、役つきのヤツがするもんだろ」
私が考えていたことを読んだみたいなタイミングで言う氷室さんに、苦笑いを返した。
「店長は結構そういうところがあるので」
よく言えば、部下を信用している。悪く言えば……判断を部下に委ねたがる。自分では決めようとしない。
週に一度行われる戦略会議でも、いつまでもハッキリとしない店長に、社員がイライラしているのは雰囲気で察していた。
だからこそ、浅尾さんはしきりに〝塚田さんのこと、我慢してないで店長に言うんだよ〟と忠告してくれるんだろう。
私以上に事なかれ主義の店長は、誰かから強い訴えがない限りは動かないから。
ベーコンを混ぜたスクランブルエッグを食べ終え、片付けのために席を立つと、氷室さんもそれに続く。