エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~


どこまで本気で言っているんだかがわからなくて怖い。
一応、釘だけ刺しておくと、氷室さんは空になった栄養ドリンクの瓶を作業台の上に置き「それより」と話題を変えた。

「そこにある箱、取引先からもらったんだけど、中身マドレーヌだったから鈴にやろうと思って。日持ちするし、おばさんにも食べさせてやって」

水色の箱は、フタだけが黄色に白の水玉模様になっていて可愛い。中を覗いてみるとマドレーヌが規則ただしく並んでいて思わず頬が緩む。

マドレーヌは母が一番好きなお菓子だ。

「ありがとうございます。きっと喜びます」
「今日、買い出し行く日だろ? 二十時に駅前でいい?」

「はい。野菜をたくさん買うので、今日はちょっと荷物が多くなる予定ですからそのつもりで」
「了解。体力余らせとくわ」

お互いに用事がない限りは、朝も夜も氷室さんの部屋で一緒に食べるのが暗黙の了解だ。そして、週に二度ほど食料の買い出しに一緒に行くのも。

友達に話すと、やっぱりこんな関係はおかしいと口をそろえて言われるけれど、誰になにを言われようと、これが氷室さんと私の〝普通〟だった。



< 43 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop