エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~


「氷室。おまえ、まさか夕飯まで藤崎頼みで生活してるのか?」
「そうだけど。昼以外の飯は鈴が用意してくれてる」

なにか問題があるのかと聞きたそうな氷室さんに、四宮さんはそれ以上はもう諦めたのか、ため息を逃がしただけだった。

「あの、でも私、氷室さんの身の回りのことをする代わりに家賃を優遇してもらってますし食費ももらっているので。料理だってどうせ自分の分は作るから手間は一緒ですし、むしろ、私には専門的な資格も知識もないのでたいした料理は作れませんから、得しているのは私の方なんです」

私ができる家事なんてたかが知れている。
氷室さんを庇うつもりではなく、事実だから話したのだけれど、四宮さんは納得していない様子で氷室さんを見た。

「俺には、藤崎の家賃と食費が例え無料だとしても、おまえの面倒を見るには不足に思えるけどな」

「はは。まぁ、その辺は幼馴染のよしみってことで」

なにを言っても響かない氷室さんに見切りをつけた四宮さんが私に視線を向ける。

「それより、さっきの男は? 大丈夫だったか? 氷室が行ったから黙って見てたが」
「あ、はい。高校の頃のクラスメイトで……なんでだか、強引にこられて困っていたところだったので助かりました」

久しぶりの再会でおかしなテンションになっちゃったのかな、と片付けていると氷室さんが言う。


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