エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
チョコをつまみ口に持って行くと、パリッと音を立てて割れる。ケーキの上に載っているチョコやサンタは特別感があって好きだと話すと、四宮さんはわからなそうにしてからふっと笑みをこぼしていた。
まさかのふたりきりという状況だけど、意外と会話は続いたし気まずさも最初だけだった。
でも、無意識にグラスに手を伸ばす回数が増えていたようで、気付けばシャンパンはもう三杯目。
私はお酒の味があまり得意ではないため、普段アルコールはほとんど飲まない。それなのに突然、アルコール度数がそこそこあるシャンパンを三杯も飲めば酔うのも当然だった。
椅子に座っているのに平衡感覚がつかめず、体がややぐらつく。
ふらっとしたところを、隣に座っている四宮さんに支えられた。
「おい。大丈夫か?」
心配そうな瞳に問われ、笑顔で返す。
「はい。全然。ふわふわして楽しい気分です」
大丈夫だと答えた私をじっと見た四宮さんは、黙ったままテーブルからシャンパンのボトルを取り、冷蔵庫にしまう。
私のグラスも取り上げられ、代わりにミネラルウォーターのペットボトルが置かれた。
「飲めるか?」と聞かれたので、言われた通りそれを飲む。
その間もテキパキ動き続けていた四宮さんによって、いつの間にかテーブルの上にあったお皿はケーキが載ったもの以外片付けられていた。
アルコールのせいでぼんやりした頭で、そういえば自炊するって言ってたっけ……と思い出す。
ふたりきりの部屋には、空調のわずかな音とBGMとしてかかっているジャズミュージックが控えめに聞こえていた。