エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
「四宮さんは偉いですね。お仕事もきちんとしているのに家事までちゃんとして。氷室さんなんて本当に私生活がだらしないから、仕事関係なく付き合いが続いているのなんて、四宮さんくらいしかいないと思います」
冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを持ってきた四宮さんが隣に座りながら答える。
「俺も八割方仕事だ。あいつがタイヤメーカーの人間じゃなかったらここまで付き合いも長引かなかっただろうな」
「それでも、仕事上の関係だけに収めることだってできるのに、ちゃんと付き合ってあげてるじゃないですか。だからやっぱり、四宮さんは偉いです」
私が言い張るからか、四宮さんは少し笑ってるみたいだった。
「それを言うなら藤崎の方がそうだろ。仕事もあるのに氷室の面倒まで見るなんて俺には真似できない」
ミネラルウォーターを飲みながら言われ、苦笑いを浮かべた。
「私は全然ダメです。仕事も私生活も、うまく立ち回れない」
仕事と言われて、一番に思い浮かんだのは塚田さんだった。
塚田さんが派遣社員として支店にきてからずっとそこが悩みなのに、この十ヵ月、その悩みはなにひとつ解決していない。
一歩も前進できず、停滞したままだ。
指揮系統がややこしいという問題はあるにしても、私がなにひとつ成長できていないからだということは確かだった。